今回はR-18指定作品の紹介です。18歳未満の方は鑑賞できません。
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皆さんは、2010年に公開された映画「冷たい熱帯魚」をご存知でしょうか?
園子温が監督・脚本を努め、ある実話をベースに作られたクライム/ホラー映画です。
鑑賞された方は分かると思いますが、この映画を観終わった時どっと疲れると共に「凄い物を観た…」という感覚に襲われます。
日本映画を牽引する1人者でもある園子温監督の作品ですが、彼の作品の中で最も凄い作品だと言っても過言では無いでしょう。
あらすじ
町で小さな熱帯魚屋を経営している社本は、娘と、新しく再婚した妻と生活している。しかし再婚が原因で妻と娘の関係は険悪になり、娘と父の間に大きな亀裂が生じていた。そんな家庭環境から非行に走る娘。ついに娘の万引きがスーパーで発覚して、大事になる寸前だった。そこに町で大きな熱帯魚屋を経営している「村田」という男が現れる。彼はスーパーの店員との仲、気さくな性格から社本一家を救い出したのだった。
それがきっかけで村田は社本家と交流し、娘をバイトとして雇うことで親交を深めていく。
しばらくして村田から高級魚を扱うビジネスの話を持ちかけられる社本であったが、それが村田の裏の顔であり、極悪非道なビジネスの実態を知ることになる引き金となる….。
モデルとなった事件
今作でモデルとなった事件は、「埼玉愛犬家連続殺人事件」で、映画では「熱帯魚店」が舞台でしたが実際の事件は「ペットショップ」で起きた様です。
簡単に説明すると、埼玉県熊谷市にあるペットショップ「アフリカケンネル」で「子犬が生まれたら高値で買い取る」という約束の元、犬のつがいを法外な高値で客に売りつけていたのがきっかけで事件が発生しました。
実際に子犬を持って行くと店主は難癖をつけて値切るという行為をし、客とトラブルになったことで殺害に及んだとされています。
その殺害方法がまたエグいのですが…
殺害方法
トラブルの発生した顧客らを、知り合いの獣医師から譲り受けた犬の殺処分用の硝酸ストリキニーネを用いて毒殺し、計4人が犠牲となった。遺体は店の役員山崎永幸方の風呂場でバラバラにされた上、骨はドラム缶で焼却された。それらは群馬県内の山林や川に遺棄され、「遺体なき殺人」と呼ばれた。
(wikipediaより引用)
この一連の工程が、「冷たい熱帯魚」で視覚化されています。
映像は本当に鳥肌ものですが、実際に起きている事件だと考えると目を塞ぎたくなりますね…。
でんでんの怪演が凄い
総じて言えることは見出しにもある様に、「でんでんの演技力がすごい」という事です。
でんでんさんは、元お笑い芸人であるにも関わらず、「の・ようなもの」出演を皮切りに俳優としての活動を本格化し、テレビドラマや映画に脇役で多数出演してきました。
その下積みもあってか、「冷たい熱帯魚」ではほぼ主演並みの役柄で、気さくで明るい熱帯魚店主/悪徳で殺人まで行う極悪非道のビジネスパーソンという二面性を持つ役を見事演じ切っています。
本当にすごい人だと思いました。人ってここまで「演じれる」のかと鳥肌が経ちましたね…。
ハリウッド映画は違和感ないのですが、日本映画のキャラクター(登場人物)って個性強い役柄が多くて、「実際にこんな人いないだろ!」「演技が正直下手…」と思う事が多々あるのですが、このでんでんさんが演じた役は個性が強いにも関わらず「こんな人実際にいそう…」という恐怖感を感じれる演技をしてくれているのです。
楽しそうなおじさん、と思いきや次の瞬間表情が一変。極悪非道の殺人鬼に変わる瞬間はいつ観ても鳥肌モノの映像になっていました。
「冷たい熱帯魚」はでんでんを観るための映画だと言っても、過言ではありません。
惜しみない過激描写
この映画で注目すべき部分は「全てをさらけ出している」所です。
それは映像は勿論、セリフにも表れています。
園子温監督っぽい映画です。
彼は本当に「自分の作りたい作品」を常に追求して映画を作っています。
だから一般受けするような映画は正直彼の作品には無いのです。しかし、だからこそコアなニーズを満たしているし、行きすぎた描写も「それが真実だ」と言わんばかりにインパクトを与えてくるのです。
例えば「冷たい熱帯魚」では、人体切断シーンなんかもバッチリ写していて、殺害工程をしっかりと追っています。それは観客にインパクトを与えるとともに、事件を風化させないための1つの手段なのかもしれません。
しかし園子温監督はこういった「人間のダークサイド」を描く作品を作るのがうまいですね。別の作品を観ても、どれを観ても衝撃を受けてしまうのはなぜなのでしょうか…。
私のオススメの日本人監督の一人であります。
おわりに
実は、「冷たい熱帯魚」は2回も鑑賞しました。
しかし内容を知っていてもその衝撃は色褪せませんでしたね…本当にすごい作品です。
観た後は本当に疲れますが、観て損は無い映画です。
ただ、覚悟を持って鑑賞して下さい。そういう映画です。
正直園子温監督作でこれを超えるものは無いんじゃないだろうか…それだけ勢いのある作品でした。
日本映画も、まだまだ捨てたもんじゃないなって実感できましたね。
気になった方は是非鑑賞してみて下さい。鑑賞した方も、しばらくしてもう一度観てみると何か違うものを感じ取れるかもしれません。
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